活躍する電気技術者達

中小規模ビルの安全を支える電気主任技術者
保安管理業務の品質と相談対応で信頼確保

活躍する電気技術者達
  • 檜垣 智一さん
    公益社団法人 東京電気管理技術者協会
    東京西北支部 副支部長
    檜垣電気管理事務所 代表
  • <保有資格>
  • 第3種電気主任技術者(1997年度)
    第2種電気工事士(1991年度)

――個人事業者として自家用電気工作物の保安管理業務に携わっています。

平成12年4月に個人事務所(檜垣電気管理事務所)を立ち上げると同時に東京電気管理技術者協会に入会しました。現在は、東京都内を中心に関東エリア45件のお客様と保安管理業務委託契約を締結しています。そのうち8割がオフィスや店舗が入居する中小規模のテナントビルで、これらの事業場における、自家用電気工作物の保安管理業務を行っています。主たる業務は毎月の点検(月次点検)と年一回の試験・測定業務(年次点検)です。月次点検では電気の使用状況や設備の異常の有無などをチェックしています。特に、漏電の有無の確認のほか、各機器の温度測定も行い、過負荷や接触不良などについても調べています。停電を伴う年次点検は主に土日祝日を利用して継電器(リレー)の動作確認を行うほか、絶縁抵抗測定試験を実施し、正確に漏電の有無を確認しています。そのほか、私が担当している事業場の中で電気設備を入れ替えることがあれば、耐圧試験を含めた竣工検査も行っています。個人事務所なので現場に行くだけではなく、報告書や付随する資料の作成、さらには経理処理などすべての事務処理を一人でこなしています。

――独立のきっかけは?

「電気」との出会いは、学校を卒業してコンセントやケーブルといった電設資材の卸販売会社に勤めていた時でした。そこで第2種電気工事士の資格を取得。その後は、私立の大学に転職し、キャンパス内の自家用電気工作物の保安管理業務を手伝わせてもらいながら第3種電気主任技術者の資格を取得しました。そうした中で、協会員と知り合うことが出来、資格と電気技術者としての技術、経験で生計を確立しているその姿を見て「これだ」と思い、独立したわけです。

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――保安管理業務にあたって日頃から心がけていることは?

一番肝に銘じていることは、「保安管理業務の品質を落とさない」ということです。ビルのオーナーから業務を委託されているわけですが、実際にオーナーが現場を見に来るわけではありません。基本的には一人で点検をするので、早く終わらせてしまおうと思えばできてしまいます。しかし、このような気持ちでは慎重さに欠け、「安全」や「安心」の確保にはつながりません。自分に厳しくないと、保安管理業務の品質向上はありえないと思っています。また、「できることを先送りしない」ということも心がけています。日々の点検の中で不安を覚える箇所が見つかる時があります。程度によっては様子を見るという判断をするのですが、そうした対応が事故につながるのではという不安がつきまといます。面倒でもできることは対応しておくとともに、自分の下した判断に誤りがないか常に自問自答することも大切だと思います。そのほか技術的な点では、最新の計測器を使用するようにしています。温度測定においては小型で持ち運びに便利なサーモグラフィーが販売されています。これを用いれば、開閉器(スイッチ)、変圧器(トランス)といった機器類全体の温度分布が表示され、高温の箇所がひと目でわかり、ポイントごとに計測する放射温度計を使っていた頃に比べて大幅に効率が上がりました。新しい計測器の導入は、保安管理業務の品質を向上させるだけではなく、そうしたことを説明することでお客様に関心を持ってもらえることにもつながります。

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――そのほか、ビルのオーナーなどとの信頼関係構築で取り組んでいることは?

オーナーもしくはオーナーから委託されたビル管理会社とのやりとりが多いのですが、電気に精通した人たちとは限りませんので、電気に関することならば何でも気軽に相談を受けるようにしています。そうした中で最近多く経験しているのが、業態の違うテナントの入居です。オフィス仕様のフロアに歯科医院や美容院などの電気の使用量が比較的大きいテナントが入居しようとすると新たな設備工事が必要になってきます。ビル全体の使用量が変わり、電力会社との契約内容にも影響することがあります。オーナーに工事の有無や概算コストを伝えるだけではなく、代理人となって新しいテナントに電気の様々な状況を伝えるなどのサポートも行うことで信頼確保に努めています。

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――今後の目標は?

協会に所属して17年が過ぎようとしています。そしてこの間、協会員の中で現場経験が豊富な熟練技術者をたくさん目にすることができました。私は、学生時代から電気を専門的に学んできたわけではありません。また、電力会社等の最前線で経験を積んできたわけでもありません。まだまだ努力が必要です。どのような現場でも瞬時に頭の中で設備の青写真を描き、それをもとに最適な保安管理業務が遂行できるように、技術力のさらなる向上に努めていきたいと思います。また、これまで様々なことで協会にはお世話になってきました。報告書の充実、事故・トラブルの分析公表、研修・講習会の開催、定期的な配布物の用意などなど、技術面、営業面で常にサポートを受け、バージョンアップが計れてきました。そして現在は協会本部、支部の双方で役職を務めております。お客様に自分の技術を提供できる仕事は、技術者としての喜びにつながると思います。これから活躍される人たちのために、協会への入会希望の相談などの活動を通して協会により関心を持ってもらい、更に多くの仲間を増やすことも目標の一つにしています。