活躍する電気技術者達

資格取得と競技大会優勝で得た技能を
現場で活かす

活躍する電気技術者達
  • 石川 さやかさん
    有限会社沖縄小堀電機
    プラント事業部 工事部
  • <保有資格>※取得年度
  • 第1種電気工事士  (2005年度)
    第2種電気工事士  (1995年度)

――公共プラント施設での電気設備工事ではどのような仕事をしているのですか?

私が担当しているプラント施設は浄水場や下水処理場といった公共施設で、電気工事に係る見積書および施工図面の作成から、工事現場の施工管理業務まで至ります。最近手掛けたのは県内にある浄水場で、1日当たりの処理能力では沖縄県最大規模の施設です。大手電気メーカーなどと建設工事共同企業体(JV)を組み、半年から1年の歳月をかけて施設内の老朽化した設備(ポンプ、発電機、ろ過装置等)といった大型設備更新に伴う電気工事を行っています。設備の更新と言っても、電線管、ケーブル撤去・再布設工事なども含まれます。プラント施設における電気工事では、電力会社から施設内に特別高圧(66kV)の電気を地中から引き込むケーブル布設工事、さらに受変電設備、発電設備、各種計装設備の工事と多岐にわたります。また設備更新工事においては、稼働中(運転中)のプラント施設を停止するわけにはいきませんので、例えば、5台あるろ過設備のポンプ更新工事では4台を継続運転しながら1台ずつ慎重に更新していくなど、県民のライフラインに影響がないよう、プラント施設の機能を十分発揮させる工事計画を組み立てる必要があります。

―― 一般家庭では考えられないぐらい危険性の高い電圧の電気を扱っているんですね。日頃からどのようなことを心がけていますか?

「安全」をいつも心がけています。特に「慣れ」が一番危険だと思い、正確な作業手順はもとより技術者には「自宅から出て帰宅するまでが仕事」である事を意識するよう周知しています。また、技術者同士のコミュニケーションも重視しています。例えば、自分のやり方や考え方を伝えるにしても「こんな施工はどうでしょうか?」とか「何か良い案はありませんか?」など、その技術者の持っている技能や個性を引き出せるようなコミュニケーションを心がけています。女性は体力面で男性には敵いませんがその反面、きめ細かなコミュニケーション能力があると思いますので、そういった点を活かして、互いにより良い意見が出し合える環境づくりに努めています。

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――電気工事の仕事や公共工事に関わるようになったきっかけは?

私の生まれ育った家庭は、両親共に電気工事士で、夫婦で電気工事会社を営んでいる、いわゆる「電気工事一家」でした。子供の頃から工事現場で働く両親の姿を見て育ち、「将来の夢は電気屋の女社長になる!」と言っている子でした。現場での手伝いは、父が段取りよく作業を行うためにコンセントやスイッチ、ビス、プレートといった部材を並べ、作業に応じて父に部品と工具を手渡す役目をしていました。建築業界ではこのような補助的作業を行う人のことを「手元(てもと)」と言いますが、当時の私は「お父さんのスーパー手元になる!」と言って手伝いをしていました。そのような幼少期を送り、電気工事士の夢を叶えるため、普通科高校2年の時に第2種電気工事士の資格を取得しました。そして父と一緒に働くようになり経験を積むなかで、平成21年に「1級電気工事施工管理技士」の資格を取得しました。それが契機となり、公共施設の工事を扱う現在の会社に入社しました。これまでは父と住宅などの民間工事のハコモノを主にやっていましたが、入社後はプラント施設などの公共工事が中心となり、仕事の内容も大きく変わりました。

――現場の仕事とは別に、電気工事の技能競技大会に挑戦してきたと聞きました。大会に参加することで学んだことは?

父の下で仕事をしていた頃、地元の電気工事業協同組合のバックアップもあり、第36回全九州電気工事技能競技大会(九州本選大会)で女性初の金賞受賞で満点優勝できました。「小さい会社でも出来るんだ!」ということを意気込みとして大会へ臨んでいたので、優勝した時は素直に嬉しかったです。また、この大会で結果を残す事が、これまでご指導・ご協力いただいた方々への恩返しだと思っていたので、周りの皆様がこの優勝を喜んでくれたことが何よりも嬉しかったです。競技課題は毎年変わりますが、大会出場を重ねる毎に体力では男性に敵わないと実感したので、時間短縮の加点よりも、品質及び出来栄えに重点を置くスタイルに切り替えたことが良かったと思います。この結果を得るまでに4大会挑戦したことで、電気工事における作業基準や判断基準に加え、仕事一つ一つの段取り、次の段取りを組み立てていくことの大切さなど、工事品質と作業効率に直結する技能を学ぶことができました。

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――今後の目標と、若い人へのアドバイスを。

これまで現場は職人気質な男性の世界でしたが、最近は大きく様子が変わってきました。現に建築屋さんの中にも若い女性技術者が見られるようになり、女性が入りやすい職場環境になってきています。電気工事業界も同じような傾向で、私の母も含め女性技術者の先輩たちがそのような環境を作り出してくれたお陰だと思っています。私は小さな「電気工事一家」からのスタートでしたが、先輩方の功績を引継ぎ、女性が活き活きと働きやすく、活躍できる場所を作っていきたいです。私が思うに、資格取得は自分を成長させるための第一歩だと考えています。資格を取得することで仕事の幅が広がり、たくさんの経験を積むきっかけとなります。タイミングもありますが、私の場合、資格を取得するたびに取り扱う工事の規模も変わり、様々な現場に携わることができました。やりがいも大きくなりました。資格は自分の一生の財産にもなりますし、資格と品質基準が同等という考えで言うと、工事の依頼主など第三者に「信頼」と「安心」を示すことができます。そのため若手の社員や学生達には「若いうちに資格取得する方がたくさんの経験を積めるよ」とアドバイスしています。