活躍する電気技術者達

電気工事の現場代理人として
現場管理から後進の育成までを担う

活躍する電気技術者達
  • 中村 政一さん
    三建設備工業株式会社
    事業開発本部 電気事業部 課長代理
  • <保有資格>
  • 第1種電気工事士(2000年)
    第2種電気工事士(1994年)

――普段はどのようなお仕事をしているのでしょうか?

電気工事の責任者となる「現場代理人」として管理業務に当たっています。ビルなどの建築工事を施工する際に「施主」とゼネコンなどの「請負人」との関係とは別に、様々な種類の工事業者が関係してきます。ここで言う現場代理人というのは建築工事において電気工事全体を取り仕切る現場監督の役目で、実際に現場に出向き、図面通りの電気工事が行われているか、現場技術者の工事手順や方法は適切か、などを入念に管理します。不都合が発生した場合は、電気工事の専門家として施主、建築業者、他の設備業者との間に立ってスケジュールや作業工程等の調整を行い、再度、施工図を書き直した上で、電気工事の内容について現場技術者に指示を出していくことになります。また、仕事は現場だけでなく図面作成や積算の仕事もあり、お客様にはメリットやコスト削減を提案しながらも一方では会社の利益を確保していくという原価管理の姿勢が問われます。このように現場代理人は、現場作業を熟知し、作業工程全体を把握し、工事計画を組み立てられることが求められます。

――現場代理人として常に心がけていることは?

現場代理人は、現場技術者と常に一緒にいるわけではありません。作業の指示を出してからは現場技術者一人ひとりの技能や経験に応じて電気工事の品質を委ねる部分があります。よって、工事の品質を確かなものにするためには二重チェックや最終検査を徹底して行うことを心がけています。これまで自分が培ってきた現場技術者としての経験を踏まえ独自の施工チェックリストを使って、作業の見落としがないかを確認するほか、目の届かないところもしっかりチェックするようにしています。
ケーブルと圧着端子との接続箇所では、ケーブルサイズと圧着端子が適合しているか施工要領書と管理指針を用いて確認しています。実際に使用した工具についても正しく使用されているか入念にチェックします。また、接続の状態については目視だけでなく、実際に自分の手で触って検査しています。現場代理人であっても確認作業は必ず自分が行い、不具合がない事を確認します。

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――やりがいを感じる瞬間は?

これまでの経験を活かして、お客様にメリットのある提案を行い、それを「カタチ」にするところです。顧客の要求を満たし、機能・品質及びコストの両面で総合的に優れたものを目指す「VE提案」というものがありますが、かつて当初の工事予算からコストを1割軽減したことがあります。それは照明の部分で、必要な照度を維持しながら機種を変更することで実現しました。そして軽減したコストは、お客様が必要とする別なところで活かすことができました。現場代理人は全体を把握し、自分で電気工事全体を計画し作業工程を進めることができますが、その一方で責任は重く、自分の判断に間違いはないか常に意識し緊張感を持たなければなりません。ですが建物が完成し、お客様に喜んでもらえた時はすばらしい達成感があります。

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――後進を育てる立場として、部下を指導するポイントは?

電気に関する社内勉強会の実施も私の仕事になっており、全体のレベルアップに努めています。当社は2012年に私の所属する電気工事の部署が新設されました。新設時から私も参加して施工要領書、計画書、社内基準などをゼロから構築した経験もあり、資格取得で勉強した知識も交えながら講義しています。
指導方法は、基本的に「考える力」を養うことに重きを置いています。一例として、工程管理の中に「山崩し」という言葉があります。これは仕事量と現場技術者の人数とのバランスを保つ管理業務の一つで、特に竣工前のピーク時は人員をうまく分散させることが重要になってきます。仕事量に対して現場技術者の人数が少ないと工期の遅れにつながります。また、現場技術者10人で行う現場に20人配置したとなると、工事内容の指示が周知徹底されていなかったり、施工手順の変更が発生するなど、効率や品質の低下につながります。そこで作業工程を教える場面では、まずは自分で工程表を作らせています。そしてこの作業は問題ないか、全体のスケジュールと作業が集中する期間はないか、もしあるようであれば、どのように分散していくかを考えてもらい、仕事の本質を理解するよう指導しています。

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――今後の目標を教えてください。

電気工事に関する資格は取得したので、今後は電気主任技術者の資格取得を考えています。電気工事を終えて建物が受電した後の保安・管理業務には電気主任技術者の資格が必要です。また定年後など今後の自分の仕事領域をさらに広げていくためにも取得したいと思っています。
資格は社会的な信用を得るために重要ですが、特に顧客となる取引先との信頼関係の構築に非常に役に立ちます。安全を守らなければならない電気工事を無資格者に一任することは絶対にありません。そのほか現場代理人を選ぶ選定基準になったり、力量を見られる指標になったりします。かつて高校の恩師に、第1種電気工事士の資格取得を勧められました。その理由は、「電気工事の仕事を続けていく上で、必ず必要となってくるはずだ」ということでした。今振り返ると、第2種電気工事士では高圧の仕事はできませんので、自分の可能性を広げるためにも第1種電気工事士の資格は必要でした。電気工事に携わり22年になりますが、これまでの仕事で100点といえる完璧な仕事はまだありません。今後も完璧を目指して努力すると同時に、様々な現場でその目標を追い続けていきたいと思います。