活躍する電気技術者達

資格で学んだ電気の基礎
工場の電気管理から節電計画まで

活躍する電気技術者達
  • 川島 智明さん
    スガ試験機株式会社
    日高・川越工場 製造部 製品検査課 係長
  • <保有資格>
  • 第3種電気主任技術者(1997年度)
    第2種電気工事士(1992年度)

――現在のお仕事は?

埼玉県日高市と川越市の両市にまたがる日高・川越工場で、素材や製品の耐候性や腐食性などを評価する「試験機」の製造工場の電気管理に携わっています。事務所や工場など施設全体の電気設備を管理する責任者としての役割を担っており、電気事業法に基づく電気主任技術者として電気設備の保安管理業務にあたっています。工場の敷地内には7つの棟があり、変電室は3つあります。毎月の月次点検では変電室のメーターチェックや漏電チェックなどを実施しています。施設全体の電気を止めて1日がかりで行う年次点検もあります。それに加えて節電や電気使用の計画を立案することもあり、内容は多岐にわたっています。

――電気を学ぶきっかけと、資格取得で役立ったことは?

試験機の設計開発から始まり、筐体(きょうたい)の作製や部品の組み立てなど当社では一貫生産体制を敷いており、機械内の配線を設計する配線課の所属になった時に電気を学ぶ必要が出てきました。会社から資格取得を促されていたわけではありませんが、大学では物理を専攻し、電気は専門外だったことや、周囲から認めてもらうためには資格取得が必要と考え、自主的に勉強しました。
第2種電気工事士の資格試験に挑む中で、基礎を学びました。その後、第3種電気主任技術者試験を受験するにあたり、試験科目に機械分野が入っていたことから少し不安がありましたが、物理に共通する部分もあってこの科目の勉強はむしろ面白く取り組むことができました。最終的に促進耐候性試験機の電気設計において勉強した知識を実務に活かすことができ、発電所やダムの発電量の計算、モーター設計、照明設計などは製品開発のヒントにつながりました。

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――電気主任技術者として心がけていることは?

1997年に電気主任技術者の資格を取得し、社内で管理者のポジションに就くことになりました。企業によっては電気主任技術者が行う保安管理業務を外部委託するケースもあるようですが、当社では先代社長から続く「自前主義」という教えから委託をせずに自前で電気主任技術者を置くようにしています。外部に委託しない経営方針から管理者としての責任は重大で、電力の供給面で工場の稼働を止めてしまっては大変なことになります。先ほども言いましたように一貫生産体制を構築する一方で、試験機はお客様からのオーダーメイド製品ばかりです。1台ごとに仕様が異なりますので、ロット生産している標準品を代替機として納入することができません。納期の観点からも工場全体の安定稼働は不可欠です。そのため「安全第一」を常に心がけ、社員には明確な指示や命令を出し、規則をしっかり守ってもらうよう努めています。

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――印象に残っている仕事や、日頃から注意を払っていることは?

2011年の東日本大震災での仕事が印象に残っています。震災当時は1日2回の計画停電に備え、会社の窓口となり電力会社との調整に奔走しました。工場は繁忙期で、生産計画に支障が出ないよう電力供給の面でぎりぎりの交渉が続いていました。その後さらに、経済産業省から夏場の電力使用制限が出され電気使用量を前年比で15%削減しなければならなくなり、対策として冷房と照明を効率的に使えるよう製造現場をなるべく1カ所に集約するなど工夫しました。その結果、電力使用量は計算通りになり、最終的には25%の削減に成功しました。
最近では地震に加えて雷にも細心の注意を払っています。落雷での事故だけでなく、局所的な雷雨で突然停電に見舞われ、防犯設備や火災報知機に影響が出たり、ネットワークシステムがダウンする危険があります。これまでのところ社内の設備や機器で被害を受けたことはありませんが、突発的な事象にも対応できるよう管理者としての意識を高めています。また細かい点では、害虫にも気をつけています。過去のことですが、ある変電室が樹木の多い場所にありました。年次点検の際、高圧回路の絶縁が悪いと聞きキュービクルを点検すると高圧交流負荷開閉器が白く変色していました。調べてみると害虫が大量に発生していることが判明し、すぐに害虫を駆除し、機器を交換しました。事故を未然に防ぐことにつながりました。樹木があることで施設内の景観はよくなるのかもしれませんが、害虫による電気設備への影響を改めて認識させられました。

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――これからの電気技術者へアドバイスを。

時代の変化に伴って、電気以外の分野にも興味を持ち、しっかりと基礎知識を身につけることが重要だと考えています。また、それを実践することで新しい発想も生まれてくると思います。最近の技術や製品はコンピューターだけでなく、様々な要素が複雑に絡み合っています。最初は知識が浅くてもそれが基礎となり、今後の可能性を広げていきます。電気を専門としない分野で働かれている人たちにもぜひ電気について学んでほしいと思います。