活躍する電気技術者達

震災からの奇跡的な復旧
電気を必要としている人のために

活躍する電気技術者達
  • 関 正文さん
    東北電力 株式会社
    原町火力発電所 運営企画グループ課長
  • <保有資格>
  • 第1種電気主任技術者(1999年)
    第2種電気主任技術者(1997年)
    第3種電気主任技術者(1992年)
    第2種電気工事士、
    エネルギー管理士の資格も保有

――現在の仕事の内容は?

東北電力原町火力発電所で、運営企画グループの課長を務めています。運営企画グループは発電設備の性能管理や所内教育訓練計画の策定といった企画業務と、大気汚染防止法や水質汚濁防止法に基づき発電所から排出されるばい煙や排水の管理といった環境業務が主な仕事です。

――これまではどんなお仕事をされてきたのですか?

入社してから、ずっと地熱発電所を含めた火力部門の業務に従事してきました。その中でも、火力発電所の運転・監視を行う発電グループの仕事が比較的長く、2013年7月までの2年間は、原町火力発電所の発電課長と電気主任技術者を兼任していました。

発電所の電気主任技術者は電気設備の保安の監督を行うため、設備点検時の手順書の確認や設備に関する各種試験の立ち会い、トラブル発生時の指導・助言などを行います。電気主任技術者には、電気工作物の工事・維持・運用に関し、関係する責任者に対して指示や指導・助言ができるように、当該業務に直接携わらない者が選任されます。

活躍する電気技術者達

――あの東日本大震災があったとき、発電所の主任技術者だったのですね。

はい。地震が発生したときはちょうど中央制御室にいました。すぐに発電設備の状態を確認しましたが、運転に支障がある状態ではなかったため、発電を継続していました。津波が来たのはその約1時間後です。第1波後に、見たこともない高さの波が押し寄せたためプラントを手動停止し、タービン建屋の屋上まで避難しました。といっても私自身はそのときボイラーで現場の状況を確認していましたので、津波自体を見てはいないのですが。
襲来した津波の高さは18m。1階にあったタービンやボイラー関連の主要機器はすべて被災し、事務所棟は3階天井まで水につかり、それまで蓄積してきた資料の大半は喪失しました。
また、送電線の鉄塔が津波で倒壊したため交流電源が喪失し、所内用の電源がない状況となりましたが、所員や構内企業などで協力しあい、事務所内の分電盤で起きた火災の消火活動を行ったりしました。

活躍する電気技術者達

――そんな壊滅的な被害から復旧に至るまでには、非常に苦労されたのでは?

そうですね。まず、原町火力発電所は、当時、東京電力福島第一原子力発電所から30km圏内の屋内退避指示区域に入っていたため、対策本部を30km圏外に移転しました。私はそこから保安確保のための対応や設備状況の確認のため発電所に通っていましたが、津波により瓦礫となった設備を見て「本当に復旧できるのか」と不安に思っていました。
しかし、復旧すると決まったあとは、工事会社やメーカーとも一丸となって復旧作業に取り組み、2012年6月に送電線から受電した後、11月には2号機の発電を再開しました。当初は、2013年夏前の発電再開を計画していましたので、半年以上も前倒しできました。所員一同、一日も早く発電を再開し、被災地に電気を届けるという目標があったからこそ、できたことだと思います。

――復旧までの取り組みの中で、電気主任技術者としての仕事にはどのようなものがありましたか?

地震発生から瓦礫の撤去までの期間は発電課長として、機器の保管対応や官庁手続きなどの業務がメインでした。
主任技術者としての業務は復旧に着手してからが中心です。工事用電源の設置や配電盤開閉装置取替に伴う各種試験の立ち会い、主変圧器取替工事では電気事業法に基づく工事計画書の作成や使用前自主検査に携わりました。
急ピッチで工事を進める中でも、しっかり設備の保安を確保しなければなりません。海水に冠水した機器を再利用する場合などは、それが本当に使えるかどうか点検や評価をしました。被災したケーブル張り替えに伴う絶縁耐力試験なども、一つ一つ丁寧に行いました。

――電験の取得のために学んだことは、そうした仕事の中で活用されていますか?

復旧中の電気設備の絶縁耐力試験や、取り替えを行った変圧器の工場立ち会い検査や使用前自主検査などは勉強した内容が直接かかわってくる場面です。技術的な知識や法律上の手続きなど、いろいろなところで勉強した知識が役に立っていますね。

――電験1種の取得に至った経緯は?

20代の頃から電験3種に挑戦していたのですが、2種や1種を目指し始めたのは原町火力の建設業務に携わっていたころです。それまでの業務と違う建設試運転業務の中で、もっと電気の知識があった方がいいと思うようになり、電気の知識を深めるために電験に挑戦しました。職場に電験の資格を持っている人がたくさんいたことも後押しになりました。
受験に当たっては、社内の教育機関である東北電力学園専門部(当時)で電磁気や電気回路等の基本を教えていただいたことが大きなプラスになりました。勉強時間の確保は交代勤務でしたのでそれほど大変ではなかったと感じています。
また、日々の学習については電気関係の月刊誌の活用や火力分野の業界団体が発行する機関誌などに掲載されている情報は火力や原子力発電などの発電関係の試験対応に役に立ちました。
そうした勉強の結果、短期間で試験に合格し、1999年に第1種の資格を取得しました。

活躍する電気技術者達

――合格を目指している人にアドバイスを。

資格取得までには多くの苦労がありますので、モチベーションを保ち続けることが必要です。そのためにも、『こんな技術者になる』という将来像をイメージすることと、『必ず取得する』という強い意志を持って資格取得に向け励んでください。

( 内容は、2015年12月末時点の所属・役職に基づくものです)